Monthly Colloquium
Monthly Colloquim: 「京」によるダークマターハローシミュレーション
by
Prof.
Junichiro Makino
(
Tokyo Institute of Technology, Interactive Research Center of Science
)
Tuesday 8 Oct 2013, 13:30
→
14:30
Asia/Tokyo
RIBF Hall
RIBF Hall
Description
我々のグループが「京」を使っておこなったいる、ダークマターハロー形成の研究について、その背景、課題、現状を概観する。ダークマターは宇宙の全質量の 85% 程度を占めるとされるが、その正体は全く不明であり、見える物質、すなわち銀河の形成や空間分布に対する影響からその存在・性質が間接的に推定されているのみである。この推定は、基本的に、銀河の構造、分布等の観測結果と仮定したダークマターの性質、宇宙モデルから予言される結果の比較によっており、予言には数値シミュレーションが本質的な役割を果たしてきた。1970年代には既に、円盤銀河が安定に存在するためにはほぼ球対称に分布したダークマターが必要なことがシミュレーションから示された。また、80年代から90年代にかけては、遠方銀河の観測により宇宙の大規模構造の存在が明らかになり、現在の標準モデルである「冷たい暗黒物質」が確立した。これらのシミュレーションは、銀河スケールより大きな構造を扱うものであった。 近年では、「冷たい暗黒物質」の候補になりえる粒子を直接的に、あるいは間接的に観測しようとする試みも盛んになっている。この場合にも、何が観測できるのかを知るためには構造形成シミュレーションが重要な役割を果たすが、ここでは銀河内のダークマターの分布が問題になる。我々が「京」で行おうとしているのは、そのような非常に小さな空間スケールでのダークマターの構造形成である。現在までの成果と、「京」でのシミュレーションの現状、将来の展望を合わせて紹介したい。