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中性子星磁極における強磁場下での輻射輸送に対する観測的研究(岩切 渉)Observational Study of Radiative Transfer under Strong Magnetic Fields on Neutron Stars

Asia/Tokyo
RIBF Bldg. Room 203 (RIKEN Wako)

RIBF Bldg. Room 203

RIKEN Wako

Description
日時 : 2013年6月12日 (水曜日) 15:30から 会場:RIBF棟会議室203号室 講師 : 岩切 渉 (玉川高エネルギー宇宙物理研究室) Wataru Iwakiri (High Energy Astrophysics Lab.) 題目 : 中性子星磁極における強磁場下での輻射輸送に対する観測的研究 Observational Study of Radiative Transfer under Strong Magnetic Fields on Neutron Stars 概要 : 降着駆動型パルサーは、中性子星と恒星の連星系であり、中性子星の周りに形成された降着円盤内縁のプラズマが中性子星の強磁場に捕まって磁極へと流れ込み、 重力エネルギーが解放され数 keVの温度を持つ高温プラズマの柱―降着円筒が作られる。中性子星の磁場強度は10^12 G、電子のサイクロトロンエネルギーにして数十 keV にも及ぶため、プラズマ電子の磁場に垂直な方向の運動量はランダウ準位に量子化されており、降着円筒からのX線エネルギースペクトルにはサイクロトロン共 鳴散乱による吸収構造が確認されている。そのため降着駆動型パルサーは地上では作り出すことの難しい定常強磁場中における輻射輸送の基礎物理を探査するのに理想的な実験室となっていると考えられるが、未だに観測されるスペクトルの連続成分、共鳴散乱によるプロファイルを説明しきれ ていない。本研究は、降着駆動型パルサー4U 1626-67 に対して、2006年の中性子星自転速度のspin-down phaseにおいて硬X線帯域に高い感度を持つ日本の第5代X線天文衛星すざくを用いて観測を行い、自転位相ごとの詳細なX線スペクトル解析を行った。その結果、硬X線帯域の明るい位相ではスペクトルの連続成分は、光学的に厚いThermal Comptonization のモデルで再現できるが、暗い位相では光学的に薄いモデルで再現できることがわかった。また、共鳴散乱による吸収構造が暗い位相では輝線構造に変化するこ とを3シグマ以上の統計水準で世界で初めて発見した。本セミナーではこれらの結果に加えて、2010年に行われたプラズマの降着率増加による と思われる自転spin-up phase での観測結果との比較も踏まえて、中性子星磁極における強磁場中プラズマの輻射輸送過程に関する議論を行う。 知の共有ゼミ