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「何がドリップラインを決めているか」大塚孝治 (CNS + RIBF Seminar #295)

by Prof. Takaharu Otsuka (UT, RIKEN)

Asia/Tokyo
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Description
This seminar, "What determines the driplines of atomic nuclei?", is a set of two talks in Japanese and English. The contents are
basically the same.
   Speaker: Prof. Takaharu Otsuka (UT and RNC)
                  大塚孝治 名誉教授 (東大、RNC)
   Japanese talk: Nov5(Fri) 10:30-
   English talk:  Nov5(Fri) 23:00-

<Japanese talk> nov5 10:30
https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/j/83927551147?pwd=SFRRSktUc3pwMW9PeUlxeFNwbFI5UT09
    passcode: 807774

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「何がドリップラインを決めているか(核物理の原点を見直そう)」

原子核のドリップラインの確定とそれに関わる物理の解明はRI ビーム加速器による研究の最重要の課題である。理研RIBF による F, Ne, Na の最近の成果は記憶に新しい。
従来の描像では、中性子ドリップラインの原子核ではゆるく束縛されている中性子があり、それらが状況に応じて中性子ハローや中性子スキンを生じる、とされてきた。これは中性子に働く平均ポテンシャルでの一粒子状態が占拠されていくという描像に基づいている。最近我々が行った理論研究*では、この描像は F, Ne, Na やMg のアイソトープでは当てはまらないことが示された。原子核の結合エネルギーには変形エネルギーなど、核子間の相関から来る寄与があり、その大きさは増減する。この変化が重要であり、第一原理的な計算によりそれを評価できるようになった。この効果が増えればドリップラインは先に伸びる。これに加えて、核力のモノポール成分の効果があり、ドリップラインを先に伸ばす。その効果が、変形効果の減少を打ち消せなくなるとドリップラインとなる。その時、原子核は中性子数が増えると、ゆるく束縛された中性子を伴うことなく、突然束縛されなくなる。

セミナーではこの新しいドリップライン・メカニズムを分かりやすく解説し、それがより重い原子核の多くで普遍的に起きている可能性やその実験的研究についても議論したい。さらに、陽子分布、中性子分布の半径に、このメカニズムがどう関わるか、変形核では中性子スキンは発達しないのか、などの最新の未発表の話題も議論し、不安定核物理のさらなる発展に資したい。

* N. Tsunoda et al, Nature, 587, 66 (2020).