BTOF-J

Asia/Tokyo
Description

TOF-Japan Meeting 議事録

日時:2026年7月8日
形式:Zoom Meeting

1. KEKビームテストにおける時間分解能の問題

1.1 現状

AC-LGADセンサーのjitterから期待される時間分解能に対して、MCP-PMTを時間リファレンスとして測定した時間分解能が大幅に悪い問題について解析状況が報告された。

これまでAC-LGADセンサー側の波形、解析手法、オシロスコープ設定などを詳細に確認してきたが、時間分解能を悪化させる主要因を特定できていなかった。

浜松ホトニクスとの議論では、過去に類似した状況が観測された可能性があるとの情報があり、引き続き原因究明を進めることとなった。

今回、新たに時間リファレンスとして使用しているMCP-PMTの信号および時間決定手法に問題が存在する可能性が報告された。

1.2 MCP-PMT CFD時間に見られる100 ps間隔のスパイク構造

MCP-PMTのCFD時間分布を細かいbinningで確認したところ、約100 ps間隔の明瞭なスパイク構造が観測された。

使用しているオシロスコープのサンプリングレートは10 GS/sであり、サンプリング間隔は100 psである。このため、観測されたスパイク間隔はオシロスコープのサンプリング間隔と一致する。

現在のCFD時間決定方法では、

  1. 波形の最大振幅を求める。
  2. CFD fractionからthresholdを決定する。
  3. thresholdを挟む2つのサンプリング点を探索する。
  4. 2点間をpol1によって線形補間する。
  5. CFD thresholdとの交点をCFD時間とする。

という方法を使用している。

MCP-PMT信号のrise timeは約265 psと非常に速く、立ち上がり部分に存在するサンプリング点は2~3点程度しかない。また、rise timeのイベントごとの揺らぎはσ ≈ 3 psと非常に小さく、波形形状の再現性が非常に高い。

このため、現在の2点線形補間によるCFD時間決定では、サンプリングクロックの位相に依存したbiasが生じ、CFD時間が特定の時刻に集中する可能性が議論された。

一方、AC-LGAD信号はrise timeが約600 psであり、立ち上がり部分に約6点のサンプリング点が存在するため、MCP-PMTよりも滑らかにCFD時間を決定できている可能性がある。

ただし、100 psの量子化誤差のみを仮定すると時間分解能への寄与は

σ ≈ 100 ps / √12 ≈ 29 ps

程度であり、現在観測されている約50~60 psの未説明成分をすべて説明することはできない。

したがって、このスパイク構造が時間分解能悪化の一因である可能性はあるものの、他の要因についても引き続き調査する必要がある。

1.3 CFD時間決定アルゴリズムの検証

CFD時間計算コードについては数日間にわたって確認が行われ、明確なプログラム上のバグは確認されていない。

今後は、現在使用している2点線形補間によるCFD時間決定方法について、特にMCP-PMTのような高速信号に対して適切であるかを検証する。

CFD crossing周辺のより多くのサンプリング点を使用したフィットや、別の時間決定方法を適用し、100 psスパイク構造および時間分解能がどのように変化するかを確認する必要がある。

また、MCP-PMTとAC-LGADのabsolute CFD timeの相関を詳細に確認し、共通のglobal timing fluctuationが時間差を取ることで十分にキャンセルされているかを検証する。


2. MCP-PMTのAmplitude–ToT構造

MCP-PMTについてAmplitudeとTime over Threshold(ToT)の相関を確認したところ、複数の明瞭な帯状構造が観測された。

イベントごとの波形を確認すると、一部には複数ピークを持つ波形が存在している。

当初、近接した時間に複数粒子が入射したイベントやビームのマイクロバンチ構造の影響が可能性として議論された。

しかし、観測されたピーク間隔は加速器RF構造とは一致しない可能性が高い。

金田氏から、MCP-PMT内部の残留ガスによるion feedbackの可能性が指摘された。

MCP-PMT内部で生成されたイオンが光電面方向へ戻ることによって遅延した二次信号を発生させる場合、主信号の後方に一定の時間差で複数のパルスが現れる可能性がある。

このような後続パルスを含む波形に対して低いthresholdでToTを計算すると、後続パルスを含むかどうかによってToTが離散的に変化し、Amplitude–ToT分布に帯状構造が形成される可能性がある。

一方、低いToT thresholdではbaseline noiseを拾っている可能性も指摘された。

現在使用しているToT thresholdは10~20 mV程度であり、100 mVや500 mVなど異なるthresholdを使用するとAmplitude–ToT構造が大きく変化することが確認されている。

したがって、以下を確認する必要がある。

  • MCP-PMTのbaseline noiseの定量評価
  • ToT threshold依存性
  • 波形の後続パルスの時間間隔
  • 後続パルスの発生確率
  • ion feedbackの時間スケールとの比較
  • ToT構造と時間分解能の相関

3. MCP-PMTイベント選別による時間分解能の評価

Amplitude–ToT分布には複数のイベント集団が存在するため、特定のToT領域を選択した場合に時間分解能が改善するかを確認することが提案された。

例として、

ToT = 2800~3200 ps

などの狭いToT windowを設定し、イベント集団を限定した状態で時間分解能を評価する。

この解析の目的は「どのToT領域が正しいイベントか」を最初に決定することではなく、MCP-PMTの波形形状またはToT依存性を排除することで時間分解能が改善するかを確認することである。

ToT cutによって時間分解能が大幅に改善する場合、MCP-PMTの波形品質が現在の時間分解能悪化に寄与していることを示す重要な証拠となる。


4. レーザー測定との比較

ビームテストデータではMCP-PMTを時間リファレンスとして使用しているが、レーザー測定ではレーザートリガーを時間基準として使用できるため、よりクリーンな時間リファレンスを得ることができる。

矢野氏がKEKビームテストデータを解析し、松谷氏がレーザー測定データを解析する。

両者の結果を比較することで、

  • AC-LGADセンサー固有の時間分解能
  • MCP-PMT由来の時間揺らぎ
  • CFD時間決定アルゴリズムの影響
  • オシロスコープのサンプリングの影響
  • 波形品質によるイベント依存性

を切り分ける。

疑わしい要因を一つずつ検証し、現在観測されている約50~60 psの未説明成分の起源を明らかにする。


5. AC-LGADセンサーの時間分解能評価

レーザー測定では、隣接する2ストリップの時間差を利用することで、共通の時間揺らぎをキャンセルしてセンサー固有の時間分解能を評価している。

2つのストリップが同等の時間分解能を持つと仮定すると、時間差分布の幅を√2で割ることで単一ストリップの時間分解能を求めることができる。

特にストリップ間中央領域を選択することで、信号伝搬時間の位置依存性を小さくした評価が可能である。

この方法では約24.7 psの時間分解能が得られており、AC-LGADセンサー自体は30 ps以下の時間分解能を達成できる可能性が示されている。


6. レーザー測定環境および今後の研究計画

レーザー測定システムを今後どのように運用するかについて議論された。

単に広島大学で測定技術の研修を行うだけではなく、その後、各研究機関でどの測定を担当するのかを明確にする必要があるとの指摘があった。

特に、松谷氏が現在行っている測定を他のメンバーが単純に繰り返すだけにならないよう、

  • 測定対象
  • 各機関の役割
  • 使用するサンプル
  • 測定項目
  • 測定スケジュール
  • 測定結果の統合方法

を含めた具体的な計画を作成する必要がある。

レーザー測定の研修・測定時期については、8月から9月頃を候補として調整する。

8月17日~26日はサマーチャレンジ等の予定があるため、この期間を避けてスケジュールを検討する。


7. 検出器開発関連部品の購入

松谷氏が作成した部品リストをもとに、購入可能な部品から発注を進める。

価格が公開されておらず問い合わせが必要な製品については、斉藤氏が窓口となってメーカー等への問い合わせを行う。

また、ワイヤーボード関連の作業についても斉藤氏が引き続き担当する。


決定事項・今後のアクションアイテム

担当

内容

矢野

MCP-PMTのCFD時間に見られる100 psスパイク構造の原因を引き続き調査する。

矢野

MCP-PMTのCFD時間決定方法を検証し、2点線形補間以外の時間決定方法を試す。

矢野

MCP-PMTとAC-LGADのabsolute CFD time correlationを確認し、global timing fluctuationのキャンセル状況を評価する。

矢野

MCP-PMTのAmplitude–ToT構造について、threshold依存性、baseline noise、後続パルスの時間構造を調査する。

矢野

MCP-PMTにToT cutを適用し、イベント選別によって時間分解能が改善するか確認する。

矢野

ToT構造とMCP-PMT時間分解能の相関を定量評価する。

矢野・松谷

KEKビームテストとレーザー測定の結果を比較し、時間分解能悪化要因を切り分ける。

TOF-Japan

レーザー測定について、研修後の測定対象、役割分担、サンプル、測定項目を含む具体的な研究計画を作成する。

関係者

8月~9月頃を候補としてレーザー測定・研修スケジュールを調整する。8月17日~26日は避ける。

斉藤

松谷氏の部品リストを確認し、購入可能な部品の発注を進める。

斉藤

価格問い合わせが必要な製品について窓口となり問い合わせを行う。

斉藤

ワイヤーボード関連の作業を継続する。

次回までの重点事項

最優先課題は、MCP-PMTが現在観測されている時間分解能悪化にどの程度寄与しているかを定量的に評価することである。

特に、

  1. CFD時間決定アルゴリズムの変更による100 psスパイク構造の変化
  2. ToT cutによる時間分解能の変化
  3. ToT threshold依存性
  4. MCP-PMT後続パルスの起源の特定
  5. レーザー測定とビームテスト結果の比較

を進め、約50~60 psの未説明成分の起源を明らかにする。

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    • 1
      General & Test-Beams
      Speaker: Satoshi Yano (Hiroshima University)
    • 2
      Simulation
      Speakers: Ayuki Watanabe (Tohoku University), Kentaro Kawade (Shinshu University)
    • 3
      Test bench
      Speaker: Kanato Matsutani (Hiroshima University)
    • 4
      FPC
      Speakers: Itaru Nakagawa (RIKEN), Takashi Hachiya (Radiation Laboratory, RIKEN)
    • 5
      DESY ANALYSIS
      Speaker: Koyuki Iwatsuki (Nara Women's University)
    • 6
      Readout Board
      Speaker: Masashi Kaneta (Tohoku University)
    • 7
      KEK and RARiS Analysis
      Speakers: Taichi Egami (University of Tokyo), Taiichi Egami (The University of Tokyo)
      • DESY, KEK, RARiSのtbデータ解析では、カッティングの値などを揃えた同じ解析フローにしていますか?
        - 私はそのようなことを聞いていなかったのですが、そもそも揃える必要があるのでしょうか?

      • 現在は、松谷さん(KEK5月)のトポロジーカットを参考にカットなどをかけいますが、このままそれに沿った解析でいいでのすか?
    • 8
      Setup for temperature dependence measurement
      Speaker: Tatsuki Saito (Hiroshima University)