Monthly Colloquium

Monthly Colloquium: Nature hates waste --New principle of minimum entropy production

by Dr Masuo Suzuki (Nishina Memorial Foundation)

Asia/Tokyo
Nishina Hall

Nishina Hall

Description
自然法則を変分原理で大局的に捉えることは,その現象の本質的な深い理解にな る.光学,力学などは時間積分に基づく変分原理でそれらの基本法則が導かれる ことはよく知られている.これらはすべて時間反転対称性を満たす可逆過程であ るあるが,現実の現象は,一般に不可逆である.それを特徴付けるのがエントロ ピー生成である.最近,ブラックホールのエントロピー生成の問題も多くの人々 によって議論されている.物性物理の分野では,オンサーガーやプリゴジンなど の理論に見られるように,線形の輸送現象(電気伝導や熱伝導)は瞬間的なエン トロピー生成最小の原理で記述される.しかし,この原理は非線形の場合には成 立しない.これは長い間の大問題であった.最近,この問題に新しい光がさして きた.すなわち,エントロピー生成最小の新しい原理の発見である.  それは,今までのように瞬間的なエントロピー生成を最小にするのではなく, 時間積分された量を最小にする変分原理である.定常状態を記述する法則である にもかかわらず,積分された量を問題にするところが革新的であり現代的である と言える.今風に言えば,それは,エネルギーの蓄積された無駄を最小にすると いうことである. コロキュームでは,このエントロピー生成・エネルギー散逸最小の新原理を,電 気回路,熱伝導,化学反応などを例にして,わかり易く説明する.