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DAFNE加速器におけるK中間子水素原子X線精密分光実験 - 第 9 回「ハドロン・スクエア」

by Dr 信二 岡田 (RIKEN)

Asia/Tokyo
仁科ホール (理化学研究所 和光キャンパス)

仁科ホール

理化学研究所 和光キャンパス

Description
最近、K^-中間子と陽子のクーロン力による束縛系「K中間子水素原子」の X線精密分光実験(SIDDHARTA)により、1s軌道におけるK^-と陽子間の強い相互 作用によるレベルシフトと幅を世界最高精度で決定した (Physics Letters B 704 (2011) 113)。実験は、イタリア国立フラスカティ研究所における電子・ 陽電子衝突型加速器DAFNEにて行った。同原子のX線収量は、シュタルク効果に より標的密度が高くなるにつれ減少する為、低密度ガス標的を用いることが 本質的である。しかしながら、従来のハドロンビームラインでは、K-を効率的 にガス標的に静止させるのは難しかった。DAFNE加速器は、e^+ e^-衝突により Φ中間子を大量生成し、Φ->K^+ K^-二体崩壊から運動量の揃った低エネルギー K中間子を供給する為、ガス標的にK^-を効率よく静止させ、K中間子原子を 生成する実験には最適な施設である。X線検出には、本実験の為にヨーロッパ 研究プロジェクトにおいて開発された大面積(1 cm^2 / 1台)・高分解能 (ΔE ~ 170 eV @ 6 keV、Δt < 1 usec)のシリコンドリフト検出器 (SDD) を 用いた。X線分光を目的とし100台を超すSDDを加速器実験にて用いたのは本実験 が初である。本測定により,従来問題であったK^-p散乱データとの矛盾が解決 され、ストレンジネス系のハドロン間相互作用に対する定量的な制限は飛躍的に 向上した。本セミナーでは、実験概要とその結果に加え、将来展望についても 紹介する。
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