我々はこれまで、SACLA で開発されたベイズ最適化プログラムを理研 RIBF に適用し重イオンビームのビームトランスポートラインの光学系最適化の試験を行ってきた。これにより通過率とスポット形状の同時最適化などに成功する一方、変数が増えるに連れてその最適化の効率化が課題となってきた。そこで今回は比較的シミュレーションを行いやすい加速後のビームトランスポートラインについて、シミュレーション上でのベイズ最適化、及びそれを用いた効率的なアルゴリズムの開発状況などについて報告する。
ビーム輸送ラインの調整を行う際に、ローカルマキシマムを避け、効率的に最適化するためには全体を一括で調整することが望ましい。そこで我々は変分オートエンコーダー(VAE)による次元削減を用いることで長いビームラインを効果的に最適化する手法を考案した。VAEの学習にビーム輸送シミュレーションを活用できれば、学習効率は格段に向上し、また、ありとあらゆるビーム輸送系で活用できるようになる。そこで我々は仁科加速器研究センターRIBFのLEBTにてシミュレーションで学習したVAEの動作検証を行った。本発表ではその結果について報告を行う。
SPring-8/SACLA加速器基盤施設では、SACLAにおけるXFEL輝度・スペクトラムの幅などを目的関数として、加速管の位相や磁石の電流値について最適なパラメータを探索するために、GPR (Gaussian Process Regressor)を用いた機械学習手法を導入している。この手法を用いた加速器調整は都度学習で行われており、過去の調整結果やシミュレーションなどの外部データを組み込むことが難しい。また、最適なパラメータを探し当てる能力に長けている一方で、運転中にその性能を維持するということについては改善の余地がある。我々は、これらを補完するための手法として、強化学習を導入した加速器調整システムの構築を進めている。コアのアルゴリズムには、Attention機構の一つであるVision...
QST六ヶ所研究所では、IFMIF/EVEDA原型加速器(LIPAc, Linear IFMIF Prototype Accelerator)のコミッショニングを日欧協力の幅広い(BA)活動で進めている。LIPAcは125 mAの重陽子ビームを9 MeVまで加速し、連続(CW)運転することを目標としており、入射器は140 mA、100 keVの重陽子ビームを安定に供給することが求められる。本発表ではLIPAc入射器における大電流・高デューティ試験の状況や課題について報告したい。
Electron Cyclotron Resonance(ECR) ion sources are one of the most common first stage of many modern accelerators. Typically, their design include few free settable parameters to optimize performances during commissioning and for re-tuning after maintenance. The optimization of set point is often based on the know how of an expert. In this work we report the status of the multi objective...
東京大学CNSでは14GHz HyperECRイオン源を用いて理研AVFサイクロトロンに様々なイオンを供給している。本イオン源は設置から30年以上にわたり改良が続けられており、その多価重イオンビームの大強度供給技術は成熟してきた。一方で特に固体試料ビームの長期供給においては、供給中にビーム量の低下やビーム生成の不安定化が発生するなど、その制御に課題が残っている。ビームのさらなる大強度・安定供給を目指し、現在、機械学習を用いてイオン源の安定制御を補助するシステムを開発中である。今回の発表では、これまで開発を進めてきた、ニューラルネットワークを用いたビーム電流予測モデルを紹介する。
J-PARC 3GeV RCSでは、RCS内に設置された電流モニター(WCM)の波形を周回毎に切り出し、縦方向に並べて一つの画像とすることにより、リニアックからの入射ビームの縦方向の振動の情報等を視覚的にも理解できるようにしている。この画像が、マウンテンプロット画像である。最近では、機械学習による画像を扱った技術は幅広い分野で用いられている。今回、この画像を扱った技術の一つである画像生成技術を加速器分野に適用する試みとして、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)と長期短期記憶(LSTM)を組み合わせたニューラルネットワークを用いて、WCMの周回毎の波形の変化を学習し、予測画像を生成することにより、マウンテンプロット画像の生成を行なった。画像生成の方法や結果、使用したニューラルネットワークについて発表する。
横河電機製Programmable Logic ControllerのCPUモジュールであるF3RP70-2L上で異常値検知システムを評価試作している。システムはPythonの機械学習ライブラリscikit-learnを用いて開発されている。実際のオペレーションとして機械学習を導入、運用する上でのインターフェースについて考察し、本会議で報告する。
加速器の状態監視に纏わる測定値は、例えばピックアップの電流、冷却水や筐体の温度、真空度など多岐に渡り、仁科加速器では数万点を常時モニターしデータ保存している。これらの数値は加速粒子や加速エネルギーによって、またそれらが同じでも気温や供給される電力の変動によっても毎回微妙に異なることが多い。今回、機械学習(深層学習)を用いてこれら数多い点数の数値を包括的に監視し、故障などエラーの予知やよりよい調整のために活用しようとした際に生じる問題と、それを解決する工夫の一例を紹介する。
広島大学、呉工業高専、広島商船高専では、KEK加速器総合育成事業の支援を得て、最新デジタル技術の加速器分野への応用とそれを通じた人材育成に取り組んできた。特に、近年、社会の様々な領域で利用が急速に拡大しているAI・機械学習は関心を持つ学生が多いことから、それらの加速器分野への応用を通じて関連する知識を身に着ける機会を創出し、合わせて加速器分野への興味を高めることを目指している。KEK Photon Factoryのビーム位置検出器のデータを用いたビームの異常や検出系の故障の検出を目指す研究、試験加速器cERLのビーム調整の省力化・自動化を目指した研究などを通じた学生教育・人材育成の最新の状況を報告する。
In this presentation, I introduce the AI/ML applications for the Fermilab accelerator system. For example, a fast AI/ML FPGA hardware is installed on the Recycler Ring beam control system to tune the beam position to reduce the beam loss rate. The proton linac has other type of the AI/ML feedback loop to manipulate the RF parameters. The NuMI target system has the AI/ML based muon monitor...
原子核乾板は荷電粒子の飛跡を可視化する厚みを持った写真乾板である。現像した乾板に写った飛跡を光学顕微鏡によって読み取ることで、荷電粒子の通過位置がサブミクロンの空間分解能で計測できる。原子核乾板はその空間分解能を生かし、μmスケールの飛跡しか残さない稀事象:ハイパー核・ダブルハイパー核研究などに利用されてきた。原子核乾板実験の課題の一つは、乾板中から該当の事象をいかに高速に検出するかである。そこで筆者らは、網羅的に撮影した乾板の顕微鏡画像から、ハイパー核・ダブルハイパー核の生成・崩壊事象の作る特徴的な形状の飛跡を検出するべく、機械学習ベースの画像処理法を開発した。本発表では開発の経緯・J-PARC...
住友重機械工業(株)はPET診断向けの薬剤合成用小型サイクロトロンを国内130施設以上納入しており、その大半で運転保守を行っている。保守時の装置トラブル事例において迅速な修理が難しく、病院の診療の中止につながりやすいのがイオン源関連のトラブルである。本発表では、当社の保守対象施設にてトラブル件数が多いイオン源カソードショートと呼ばれる事象の故障予知に取り組んだ。イオン源カソードショートはPIGイオン源に所定のアーク電圧を印加できなくなる事象であり、アーク時のスパッタ粉の堆積、部品破損部の落下、絶縁部の汚れといったものによる導通が原因と考えられているが、その予知技術は確立できていない。そこで、機械学習を用いて故障の予兆を可視化、注意喚起する手法を検討している。本発表ではLOF法(局所外れ値因子法)を用いて故障発生の前に異常を通知できるモデルを作成し、過去の故障発生前後のデータで評価を行...
フレーバー物理精密測定や新物理探索を主な目的とする BelleII実験/SuperKEKB 加速器
にとって、ルミノシティ向上は喫緊の課題である。2023ランまでで改善すべき問題とし
て、ビーム輸送路よりSuperKEKBメインリングへ電子・陽電子ビームを入射する際の入
射効率が安定しないことが挙げられ、これは積分ルミノシティの低下を招く。ビームの入
射調整に用いられるマグネットは主にそれぞれ2台のステアリング、セプタム、キッカーマグネットとがある。現在はエキスパートがこれらマグネットを組み合わせて合計6個のパラメータとし、そのパラメータを手動で調整している。我々は6個のパラメータを自動調整するため、機械学習、特にベイズ最適化に基づく調整ツールの開発を進めている。
本講演では、まず開発の第一段階として線形加速器 Linac...
加速器運転においては、環境温度のドリフトなどに起因してビーム状態が変化する。そのため、安定した加速器運転のためには、多数のビーム運転パラメータを常時最適値に調整する必要がある。本研究では、機械学習を使用した加速器運転調整システムを開発することで、運転調整の高速化および高精度化を目指している。開発の現状について、発表する。