Presentation materials
"光学的に薄い降着流からの放射はシュバルツシルト半径によって規格化され、ブラックホールの質量に大きく依存しないため、
10~keVを超える硬X線放射は銀河系内の恒星質量ブラックホール連星系(BHB)からAGNまで、共通して観測される。
一方、標準降着円盤(Shakura, Sunyaev 1973)で再現される幾何学的に薄く光学的に厚い降着円盤は
温度がブラックホール質量の1/4乗に反比例するため、BHBではX線領域に、AGNでは紫外から可視域に現れる。
本講演では、円盤と高温コロナの描像についてBHBとAGNの類似点と相違点に注目しながらレビューしたい。"
Since its launch on September 7, 2023, XRISM has successfully observed more than ten nearby active galactic nuclei. In this presentation, we focus on the vicinities of supermassive black holes and report on the early results from the X-ray observations by XRISM.
ALMAによりBH近傍から銀河までの全体構造が解明されてきたが、BHコロナ領域や降着円盤の構造解明にはX線が不可欠である。特にXRISMの登場により、X線でも精密分光分野という未踏領域が開かれた。XRISM PV観測とCycle1の観測で数多くの重要な発見がある。本講演ではXRISMの最新の観測成果を紹介し、新たに判明してきたコロナ、BH Wind、BLR、Torusの多スケール構造や、巨大BHが銀河や銀河団に与えるインパクトについても議論する。
IXPE衛星によるX線偏光観測はブラックホール降着流の幾何構造について制限をつけることが可能となった。しかし,さらなる詳細な幾何構造を知るためにはコロナや円盤からの偏光に加え,それらの外側に存在する円盤風などのガスによる散乱などの効果を考慮する必要がある。我々は低質量X線連星においてX線放射加熱・加速により円盤の外側で発生する円盤風からの散乱偏光についてモンテカルロ放射輸送シミュレーションによって計算した。散乱されたX線光子は,入射光子の角度分布に依存して最大で約10-20 %の偏光を示すことを明らかにした。さらに、エッジオン方向から観測されるために降着流からの直接光が円盤に遮蔽され、散乱成分が卓越すると考えられる天体V 395...