Lecture series

Baryonic Matter and Neutron Stars X-2( 高塚 龍之)

Asia/Tokyo
Nishia Hall (RIKEN)

Nishia Hall

RIKEN

Description
Course X "Baryonic Matter and Neutron Stars" 原子核物理学連続講義 コース X-2 "Baryonic Matter and Neutron Stars"               講師:高塚 龍之 氏(岩手大) Prof. emeritus T. Takatsuka (Iwate U) 会場:仁科記念棟2F 仁科ホール 日時:2013年05月09日(木)13時30分~17時 May 9th (Thu): 13:30-15:00, 15:30-17:00 Nishina Hall      1コマ目 13時30分~15時      休  憩      2コマ目 15時30分~17時 * These lectures will be given in Japanese. Abstract: 前回の講義(第 1回、1月10日)のアブストラクトで触れたように、この連続講義「バリオン物質と中性子星」の目的は筆者自身が取り組んできた「超流動」「π凝縮」「Y混在」の問題を中心的に議論し、これらの相が中性子星現象にどう絡むかについて考えることである。第1回では中性子星物理の導入部を経て「超流動」の問題を議論した。今回(第2回)では「π凝縮」問題を採り上げる。 π中間子は湯川中間子としてなじみの深いもので、核力の外側領域(r>2fm)は1個のπ交換による核力ポテンシャル(OPEP)で与えられることはよく知られている。従って、核物質はnとpそれにπから成るという人もいる。しかし、フェルミガス基底で記述される通常の核物質ではOPEPの摂動1次の効果は互いに打ち消しあって全体としては寄与しない。つまり、核物質中でのπ場の期待値<φ>はゼロであり、πがnやpと対等な構成成分とは言い難い。πはOPEPをとり持ついわば裏方の役割を担っているのに過ぎないのである。ではπ自らがnやpと同等に表舞台に登場することはあるのだろうか。πの静止質量は m_π =140MeVだから中性子星物質中でnとpの化学ポテンシャルの差が m_π を超えればn→p+ π^- がエネルギー的に可能となり、π^- がゼロ運動量(k=0)にボーズ凝縮する可能性は考えられる。しかし、実際上はk=0のπはπ-N S波相互作用の強い斥力効果をうけ、この効果が密度増加とともに大きくなるため、基底状態にπ^- があらわに登場することはない。  1970年代になって、事情は一転した。ブレイクスルーがMigdal、そして独立にSawyerとScalapinoによって提起されたからである。π凝縮という新たな核物質像が話題をよび、それ以降、核物理の中心テーマの1つになっていった。彼らはπ-N P波相互作用(いわゆるσ・∇またはσ・k結合)の強い引力性に着目し、これによる引力利得がπの顕在化に係わる損失を上回ることにより、πが基底状態に有限運動量(k≠0)でコヒーレントにあらわれること、即ち<φ>≠0を指摘した。しかし、ここで留意すべき重要なことがある。π凝縮発現に至る過程(instabilityや発現密度)の議論では、核媒質中でのπの伝播関数の特異点という発想での議論が可能だが、σ・∇という強相互作用系であるが故に、π凝縮発現後は核子系の構造変化を必然的に伴い、これらを無撞着的に扱わねばならないからである。π_0 凝縮の場合、(i)凝縮π_0 場は核子場に対し周期的一体場を提供する、(ii)核子系は局在化とスピン-アイソスピン秩序を伴う構造変化をうける。(iii)この新秩序相がもとのπ_0 凝縮の源を用意する、という相互規定的関係が特に重要である。こうした観点での研究は筆者を含む京都グループによって集中的になされ、π_0 凝縮-核子系構造変化に照応するモデル(交代的層状スピン構造(ALS)モデル)が提唱された。π_0 凝縮下の核子系の構造と1粒子基底を具体的に与えているが故に、π凝縮の物理的意味、荷電中間子凝縮との共存や中性子星現象との関連を議論する上でこのモデルの有用性は高い。 本講義では、まず、ALSモデル提示に至った歴史とこのモデルにもとづくπ凝縮発現問題を論じ、π凝縮相の特質=「EOSの強いソフト化と速い冷却機構」に着目して、中性子星現象との関連を考える: (1) OPEPテンソル力と核子系の“固化” (2) ALSモデルの提示とπ_0 凝縮 (3) 荷電π^c 凝縮、π_0π^c 共存凝縮 (4) π凝縮と中性子星の冷却 (5) π凝縮に基づくパルサーグリッチのモデル 第1回講義 コース X-1,  コース X-3 最近の原子核連続講義一覧  講義映像(Streaming Video)
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