Conveners
Session: Session 1
- Yasuto Miyake (RIKEN Nishina center)
Session: Session 2
- Yasuyuki Morita (RIKEN Nishina Center)
電子サイクロトロン共鳴イオン源における多価イオンビーム電流量の増加のための経験的手法として、軽元素ガスミキシング法がしばしば利用される。混合プラズマ中の軽元素イオンに対するイオンサイクロトロン共鳴(ICR)用の低周波数電磁波を導入することで、さらなる多価イオンビーム電流量増加の可能性が考えられている。本研究グループではXe/Ar、Xe/HeまたはAr/Heの混合プラズマを対象としてICR用低周波を導入し、イオンビーム電流量の価数分布測定とプラズマパラメータ測定、また、イオン温度に依存する物理量としてビームエミッタンス測定を行ってきた。本報告ではこれらの実験結果とその考察について述べる。
半導体製造工程におけるイオン注入には、ECRイオンビーム装置が利用されている。従来の装置は大型かつ高価であるため、本研究室では小型かつ安価で製作可能な卓上型ECRイオンビーム装置の開発を行っている。質量分離器には電磁場直交型分離器(ウィーンフィルタ : WF)を採用している。
本研究では、Arイオンビームを生成してWFで質量分離実験を行った。また、ビーム引出電圧と静電レンズ印加電圧を変化させ、ワイヤープローブによるイオンビームプロファイル測定でWFの質量分離の分解能を評価した。その結果、ビームがイオン種ごとに分離されていることがわかった。当日は詳細な実験結果について報告する。
イオン源において、ビームのエミッタンスはプラズマの状態を反映しており、ビームの輸送効率や加速効率にも強く影響する。そのため、エミッタンスはイオン源開発、加速器施設の運転の双方において非常に重要な物理量である。そこで我々は、4次元エミッタンスを高速で測定するためにペッパーポット型エミッタンスモニターの開発を進めてきた。一般的にペッパーポット型エミッタンスモニターでは、測定精度が低くなりやすい。この課題を解決するために、我々はマスクとスクリーン間の距離を可変にし、Optical Flowを用いた解析手法の開発を行った。これによりエミッタンスの測定精度を10%以上改善した。
レーザーイオン源はレーザー生成プラズマからイオンビームを引き出すイオン源でありパルス重イオンビームの形成に利用される. レーザー生成プラズマ生成時のイオン密度が高いため,レーザーイオン源は大電流密度のイオンビームを供給可能である. また, アブレーションプラズマから直接イオンをRFQ線形加速器に入射する直接プラズマ入射法(DPIS)を利用することで 10 mAを超える大電流の重イオンビームも得られる. 本発表ではそれらの技術を用いて得られたリチウムイオンビームを利用した加速器中性子源開発の取り組みを紹介する.
ムーンショット型研究開発事業目標10ではフュージョンエネルギーの実用化を目指して様々な分野で研究開発が進められる。本プログラムでは、核融合分野へ新たな加速器技術を展開させることで、フュージョンエネルギー開発にパラダイムシフトを生み出すために、革新的加速器技術の大強度化及びコンパクト化を目指す。大強度化によりアンペア級ビームの加速器技術を確立し、新たな中性子源として核融合炉材料の開発を加速する。さらに、自動サイクロトロン共鳴加速器により加速されたイオンを直接プラズマに入射・加熱することで、ビーム駆動型の小型核融合炉の成立性を検証する。本発表ではプログラムの概要について紹介する。
ダイヤモンドは絶縁破壊強度や熱伝導度など優れた物性を持つワイドバンドギャップ半導体である。本研究では、Beの放射性同位体であるBe-7の核種変換反応を利用し、Liをドープしたダイヤモンドの製作を提案する。Be-7は電子捕獲反応により安定同位体のLi-7に変換し、格子を壊すような電離放射線を発生しない。そのため、Be-7を表層にイオン注入し加熱拡散させることで、格子を欠損することなくダイヤモンド中に分布させることができれば、Be-7の壊変とともにLiが注入されたダイヤモンドとなる。発表では研究の概要と、安定同位体のBe-9を用いたコールドテスト、Be-7のイオン注入などについて報告する。
原型炉用NBI加熱では、長時間運転が可能でメンテナンスの容易な非セシウム(Cs)型負イオン源の開発が急務である。本研究室では、高密度シートプラズマを用いて非Cs型負イオン源(TPDsheet-U)の開発を推進している[1]。実験では、ガス圧力0.3Pa、引出し電圧10kVで水素負イオンビーム電流密度約8mA/cm2、随伴電子電流と負イオン電流比0.5~2.0が得られている。発表では、負イオンビームの引出し特性と大面積化用非Cs型負イオン源のプロトタイプ(TPDsheet-N)について報告する。
[1]A.Tonegawa,et al,Nucl.Fusion,61(2021)106030.
RF水素負イオン源において引き出されたビームが振動成分を持つことが観測されている。この物理において、引き出し孔に近い下流部領域におけるプラズマメニスカスに対する時間振動の影響を理解することが重要となる。特に負イオンを多く含むプラズマの場合、メニスカスのプラズマパラメータへの依存性は未だ不明である。
このメニスカスに関する物理過程を理解するための第一歩として、3D-PICコードKEIO-BFXを用いた定常シミュレーションにより、メニスカス形状の負イオンを含むプラズマ密度依存性を解析した。シミュレーションの結果、メニスカスは表面負イオンの生成量と、電子と負イオン密度の比に依存することが示唆された。
ITERのRF負イオン源開発ではビームの集束性についてまだ実証が完了していない。近年、RFが直接メニスカスに高周波振動を引き起こし、ビーム集束性を劣化させる可能性が明らかになった(K. Nagaoka, accepted to Scientific Reports)。ビーム集束特性からのこの現象をどのように理解できるか?また、この振動を抑える方法について、最新の成果を基に議論する。スクールなので、研究発表というよりは、Lecture的な講演を準備してみたい。